再審法改正をめざす市民の会
結成に向けての報告と提案

1 再審の動向

今日は、「白鳥決定」44周年という、再審の歴史的な記念日にあたります。かつて長きにわたり、再審は「開かずの扉」と言われてきました。その扉を開く鍵となったのが、1975年5月20日の「白鳥決定」です。

最高裁が、「『疑わしきは被告人の利益に』という通常裁判の鉄則は再審にも適用される」との判断を、初めて示したのです。この効果によって、早くも、翌1976年には、弘前、加藤、米谷という3事件の開始決定が立て続けに出ることになり、そして1980年代には、死刑4事件が再審無罪になります。

免田事件の免田さん、財田川事件の谷口さん、松山事件の斉藤さん、島田事件の赤堀さん。無実の死刑囚が4名も死刑台から生還したのです。この前代未聞の出来事は大いに世間を驚かせました。

司法当局は、「法的安定性を損なう」との危機感を強めたのでしょう。当時、日弁連を中心に、全国的な再審法改正運動が盛り上がり、国会に4回も法案が提出されましたが、結局、法改正が実現することはなく、1990年代以降、再審の扉は、再び堅く閉ざされてしまいました。

ところが、2000年代に入ってから、そんな再審の「冬の時代」に、変化の兆しが見え始めます。2002年の大崎第1次から2018年の日野町第2次まで、11事件について開始決定が、相次いでいます。そのうち、2010年足利、11年布川、12年東電OL、16年東住吉の無期懲役4事件、そして、今年3月の松橋事件を加え、現在、5事件が再審無罪にいたっています。

たしかに目ざましい成果です。しかし、決して手放しで喜べない厳しい現実があります。つまり、これら11事件の中で、最終的に再審無罪にいたったのは、今日現在まだ5事件だけであるという見方もできるでしょう。名張第7次や福井のように開始決定が覆されてしまったケースもあります。大崎のように、二度目の開始決定に対してもなお、検察は徹底抗戦を続けています。静岡地裁の英断により、即日釈放された袴田さんは、再び再収監の危険にさらされています。

再審全体を見れば、数多くの事件の中で、たとえ一度でも開始決定を得たことのある事件は、ほんのひとにぎりにすぎません。ほとんどの事件は、暗中模索の苦しい闘いを強いられているのです。

2 再審制度の不備が顕在化

このような激動の中で、「再審制度の不備」が、度々、世論にも取り上げられるほど顕在化してきました。「裁判体による再審格差」や「検察による再審妨害」は、もはや個別の問題ではなく、制度の問題である。無実の人を誤判から救済するには、「再審法」を改正すべきであるとの共通認識が、広まってきたのです。

「再審法」、おもに、刑事訴訟法の再審についての規定は、戦後、日本国憲法の施行により不利益再審の規定が廃止された以外は、大正11年の旧刑事訴訟法のままで、その条文は、わずか19箇条にすぎません。この時代に取り残された再審の規定を、今こそ「誤判からの救済」という理念にふさわしいものに正すべきときです。

2016年の刑事訴訟法改正では、附則9条3項に、「再審請求審における証拠開示についての検討義務」が盛り込まれました。日弁連は、今年10月の人権擁護大会で「再審法改正」をテーマに分科会を開催するとのことです。このような情勢、各界の声や世論の高まりという現状をふまえ、私たちは、今を歴史的な絶好の機会として、「再審法改正をめざす市民の会」結成に向けての準備を進めてきました。

3.結成までの経緯

昨年12月、準備会の名でリーフレットを作成し、賛同人のお願いをしました。続いて、各方面に運営委員就任のお願いをしました。

2月14日の第1回準備会と、4月2日の第2回準備会には、多数の運営委員予定者が集結し、熱心な議論を経て、会の目的や当面の目標などを確認しました。

4月2日に開催した結成直前プレ企画院内集会には、報道関係を含めて90名が参加しました。松橋事件の具体的な事実を示すことによって、再審の現状や問題点を顕在化させ、再審法改正が喫緊の課題であることを訴えました。

その他に、準備会事務局としては、月1回以上のペースで会議を行ってきました。

本日の正式な結成後、初めてとなる、第1回事務局会議を6月10日(月)、第1回運営委員会を6月26日(水)に開催します。そこで、具体的に討議することになりますが、今後の課題として、以下を予定しています。

①    会の情報発信(本格的なホームページの開設、Facebookなどの立ち上げ)
②    新しいリーフレット、ブックレットの発行
③    「法改正要綱」の作成
④    超党派議員連盟の結成に向けての働きかけ
⑤    各事件の動向と有機的に結合させた運動の展開
⑥    日弁連などとの連携の強化(10月人権擁護大会「再審法改正分科会」シンポ参加)

最後に

現在のような「再審の活性化」は、先人の努力あってこそのものです。多くの方たちが、不毛の土地に種をまき、冬の時代に耐えて大切に育ててきた、その苗が、今ようやく成長して、収穫期を迎えています。この時代に、生きて、立ち会うことのできた者の責任として、この成果を、さらに豊かに実らせて、次の世代に手渡さなければならないと思っています。

まかり間違っても、再び「冬の時代」に逆行させるようなことが、あってはなりません。そのために、あらゆる知恵を結集し、あらゆる力を尽くして闘ってまいります。

みなさまには、「再審法改正をめざす市民の会」の結成をご承認いただき、全力で応援していただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。